Message
わたしの看護2
がん看護を深めたい。
その想いに気づかせてくれた、ある出会い。
服部 聖子 腫瘍センター/1999年入職
がん看護専門看護師を目指したきっかけのひとつに、ある男性患者さんと、その奥さまとの出会いがありました。奥さまは私と同い歳。終末期を迎えたご主人を気丈に支えながらも、幼いお子さまとふたりで暮らすことへの不安を私には隠さずお話していただいていました。しかし、少し気難しい一面もあったご主人とはうまくコミュニケーションが図れていませんでした。それでも日々の看護に心を込めて取り組んでいるうちに、少しずつ心を開いて話してくださるように。ご主人が亡くなられた後も、ご家族が私に会いに病院へ足を運んでくださるなど、看護を通して良い関係を築けたと思います。しかしご家族と心が近くなればなるほど、「もっとできることがあったはず」という気持ちが膨らみました。他職種も含めて、医療チームみんなで支えられる方法を見つけたい。それは今もつづく私のがん看護のテーマになりました。
苦痛を和らげるだけじゃない。
意思決定を支えることも、緩和ケアのひとつ。
患者さんが感じる苦しみや痛みを和らげることは、とても大切。しかし、大学院から戻って緩和ケアチームで働いていた頃、それだけでは不十分と再認識させられました。どのような治療を選択するか、意思決定の場面ではさまざまな想いがぶつかり合います。たとえば、辛い治療は避けたい患者さん、少しでも長く生きて欲しい家族、治せる可能性に賭けたい医師、患者さんの想いを尊重したい看護師……。それぞれが真剣に考えるからこそ、ずれが生まれることも珍しくありません。また、仲がいい家族だからといって、気持ちがひとつになるというものでもありません。いい関係を築いてきた家族だからこそ、最後の最後に言い合えないというケースだってたくさんあります。そんな意思決定のプロセスを、患者さんと家族と一緒に歩むことも、緩和ケアのひとつ。緩和ケアチームの一員として、難しい決断を求められる場面をたくさん経験したからこそ、その想いは強くなりました。
もっとたくさん現場に出て、
がん看護の今を肌で感じるのが夢。
現在、看護師長を務めている腫瘍センターは、化学療法部門や緩和ケア部門、がん相談支援部門など、8つの部門を持ち、地域がん診療連携拠点病院としての中心的な役割を果たしています。これからも専門性の高いがん医療の提供と、地域に根ざした緩和ケアの推進などを通して、院内はもちろん、滋賀県全体のがん医療・看護の質を高めていきたいと思っています。また、私個人としては、マネジメントと並行して、現場に立つ時間も増やしていきたいと考えています。現場スタッフに直接伝えたいことも、看護の喜びややりがいを共有しながら成長し合いたいこともたくさんあります。そこで得た経験を研究に生かし、より良い看護の実践へと還していくことも夢のひとつです。